民間療法の効能
2006.10


 

まともな医師(おまじない医療をしない医師)はなぜ民間療法(Quackery)を信じないのか?

まともな医師は健康食品やQuackeryのことを「代替医療」「イカサマ医療」という表現をします。

ページ作者からも一言、言わせてもらうならば、健康食品とは健康な人のみが食べることが許される食品と考えましょう。決して病人や病弱な人は食べてはいけません。さらには健康器具、健康食品という名前を謳っているものは、その9割はニセ物と考えていいようです。これらの特徴は高価なものほど、いい加減なものであるという事実もあり、何故か高価なものしか世間には売れないようです。

新聞のチラシに限らず、マスコミが押し進めていることは実は大変危険です。新興宗教ではないのですから。

(無効健康食品・健康器具製品の例)
アガリスク------がんに効くのはウソでした
サルノコシカケ
プラセンタエキス
キチンキトサン
クロレラ
ロイヤルゼリー
クリスタルパワー
紅茶きのこ
霊芝
深海鮫スクアレン・肝油
プロポリス
酵素処理メシマコブ
液体サメ軟骨エキス
ヒアロウロン酸
グルコサミン
赤ワイン・チョコレートブーム
塗るコラーゲン
磁気ネックレス、ゲルマニウム
光線療法(赤外線・遠赤外線・紫外線)
手首に巻く金属球の玉の付いたブレスレット
痩せる耳のつぼ
足のつぼが万病を治す
足裏診断法
カイロプラクティクス(背骨のゆがみが万病のもとと主張)
あげればキリがないのですが、にがりで死者が出ています
白いんげんで、健康被害が続出

私は少なくとも上記の食物摂取などで、「驚異の効果」で「ガンが治癒した」のを見たことがありません。 医師が勉強不足で実態を知らないと主張する人がいます。がんのプロ医師は民間療法がほとんど効果がないのは身にしみています。知らないから馬鹿にしているのではないのです。もしも効くなら、多くの癌のプロ医師は厚労省の認可がなくても使います。それ以上に副作用と思しき症状は必ず見られます。例えば医薬品なら直ちに製造中止となるべき副作用を持つ健康食品が、大手を振って闊歩しているのは、まともな医療関係者から見ると我慢ができないのです。一部の栄養士や非臨床医が無責任に勧める「みのもんた症候群」に限らず、「あるある大事典」でもすでに健康被害が出ています。あの国営放送局の「ためしてがってん」もかなりウソが多い。人のふところで運用しているのだから、自前の程度の低いディレクターの頭脳ではなくちゃんとした頭脳を持った学者を雇え!と言いたい。

臨床医は時に、がんの末期、現代医学で対処できないくらい進行して悪化したターミナルの患者さんを受け持つことがあります。現代医学で対処できない患者さんが、民間療法の使用を希望されることがあります。特に有害とは考えられないときには、現代医学と併用を認めることはよくある事です。そんな患者で「驚異のXXの効果が」続々見られたなら、他の医師もまねるはずです。学会報告もありません。医師は単純に命を助けたいだけなのです。

私は民間療法でも何でもかんでも、もしも効くなら、もし助けられるなら利用したいと思っています。いや、利用すべきです。しかしそれに値するような民間療法がないのも事実です。がんを告知されたとたんに来なくなり、自分で民間療法に走る患者さんがいます。そんな人が「驚異のXX」でどんどんよくなるなら、医師も気づきます。そんな例が多数あれば、医師のところにどうだと見せにいってもらいたいものです。一般的ながん治療(手術や抗がん剤)を承諾した患者さんの中に民間療法も強く主張される人がいます。たいした有害性が認められないとき併用を認める医師も多いことは事実ですが、医師に言わずに隠れて行う人もいます。そんな方で、民間療法を併用してよくなるならいいのですが。

.製薬メ─カーは新薬を欲しがっています。本当に「驚異の効果」でがんが治るなら、製薬会社は特許料を払ってでも発売したいのです。その証拠に大手の製薬メーカーでさえ、健康食品を扱う輩が増えてきました。もしホントに効く薬が見つかったら治験を実行するくらい簡単なことです。健康保険を利用して大量に売ったほうが儲かるというものです。細々と通販や訪問販売、雑誌広告しなければならないのは、殆ど効果が無いから、ちゃんとした販売方法で売れないからです。

医学は理論科学でなく実用学問ですから、治せば「勝てば官軍」的なところがあります。仮に民間療法でもよくなるなら医師は利用しますし、学会発表も可能です。一部の狂信的な医師医師もたくさん居るので中には頭のおかしい医師もいるのですが)多くの医師に納得できるデータが示された民間療法がほとんど無いのが事実です。本当に効く療法なら、一年程度で全国の医師に広まるものですが、そんな例も実は皆無です。

一時、丸山ワクチンが熱狂的に支持されました。私もがん治療の治験に参加した一人です。マスコミが大量に報道し、動かされた厚生省も新薬としての承認手続きの治験を正式に行いましたが、結局効果は全く認められませんでした。全く効かなかったけど思ったよりは副作用が少なかった印象は私も感じました。

健康食品には直感的に効かないと思われるものが多いでしょう。たとえば、キトサンは消化吸収されず便に出て行くだけですから、間違ってもがんに効くはずがありません。しかし、それだけで否定するのではありません。実際に、がんは治らないのです。サメ関連の薬剤はアメリカ政府が効果を否定していますが、チラシにはアメリカで大好評と書いてあります。まあ、胃が悪くなって食欲がなくなるという効果はあるかもしれませんが・・・・・。

健康食品のうちでも医師、薬剤師の関与のない宗教法人が作っているこの手のものは、100%インチキです。例え薬学博士が作ったって、インチキなものが多いという健康食品なのですから・・・・・・・

チラシの怪(私への反省を込めて)

私が某市民病院の内科部長をしているときに、糖尿病で自己注射など通院中の患者さんが来られました。顔色不良で見るからにやつれていて、もしかして膵臓ガンでも見落としてしまったのか?と私自身が青くなりました。恐る恐る検査をしたのですが、血糖値が65mg/dl と低くHbA1cは9.5%と上昇していた以外に著変はありませんでした。体調が悪そうなので一時入院精密検査をお勧めし、暫定的に少しインスリン単位数を減らしました。患者さんが「先生、驚いたか?」と聞くので、正直に驚いたと応えました。糖尿病は食事が基本で「糖尿病に王道や近道なし」という忠告は聞いてくれなかったようです。

数ヶ月たって、先生のことが載ってるよ!とその患者さんがある「ちらし」を持ってきました。

その「ちらし」には、○○漢方エキス、驚くべき血糖降下作用、有名病院の内科部長もビックリ仰天の効果。インスリンを減らすことに成功!!と書いていました。確かに漢方とやらの副作用で食欲がなく体調不良で血糖値が低下していてインスリンを減らしたことは事実。何はともあれ「ガンか?」と疑って驚いたのも事実。でもHbA1cコントロールは少なくとも悪化していたので効いているとは言えません。○○漢方エキスを止めて、インスリン治療に切り替えるように指導したのですが、聞き入れてもらえず、通院だけはされていました。

この患者さん、私が退職するまでは生きておられましたが、まだいまでもお元気ならいいのですが・・・・・・眼底出血、透析と進行していると風の便りに聞きました。


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