インフルエンザについて
2007.11

認識の変わったインフルエンザ

体の節々が痛くて、だるくて、ゾクゾクして、熱がある。インフルエンザかな?と思ったら、直ちにインフルエンザの検査設備のある診療所に行き、15分程度でわかるインフルエンザの迅速抗原検査を受ける。12時間以内だとウイルス量が少なく検査が陰性のこともありますが、もしA型かB型のウイルスが検出されたら、インフルエンザの抗ウイルス薬(タミフル、リレンザ)をもらい、直ちに服用し安静にして休む。これでインフルエンザが治癒するか軽快する。尚C型インフルエンザについては大流行しないタイプなので現在のところ検査キットはありません。

お断り

このページは内科開業医が診察室で患者さんに、インフルエンザについての最小限の説明をするためのもので、諸処学説を網羅しているわけではありません。また予防法については未だに定説と言うべきものがありません。したがってプライマリーケアを手掛ける医師としての独断的立場での見解です。肩の力を抜いてお読みください。

2006年の通達で、タミフルは異常行動の可能性が否定できないとの理由から、特殊な事情がないかぎり10歳から19歳までの投与が原則中止。また10歳未満では保護者が24〜48時間監視できるものについてのみ投与が認められています。


日本のインフルエンザで思い浮かぶのが「スペイン風邪」「アジア風邪」の大流行です。これらのインフルエンザに鳥インフルエンザが関係していることをご存じの方は少ないと思います。昨今、日本で渡り鳥を介した鳥インフルエンザウイルスが検出されたこと、中国をはじめとする東南アジア諸国で鳥インフルエンザからヒトへの感染が確認されたこと、さらには死亡者さえも出たことは、近い将来、日本で大流行するであろう致死性の新型インフルエンザの出現を予想させるに十分な情報ということで今後の警告情報が大切です。

唯一の楽観的な情報が、今回の鳥インフルエンザ(H5N1)は強毒ウイルスで、ミュータントを引き起こした「スペイン風邪」「アジア風邪」のような弱毒鳥インフルエンザウイルスとはやや違うんだ。だからミュータントを少しは起こしにくいんだということくらいです。

もしミュータントが起こり新型インフルエンザが出現すれば国民の4人に一人が感染し死者は少なくとも10万人以上になると推定されています。厚生労働省やマスコミは死者が67万人とか言っていますが、その根拠に乏しく致死性の基礎疾患のある人の死亡者数を換算してどうするんだと言いたい。確かに大変な病気ではありますが戦前の日本では無いのですから、医学界は十分対抗できる知恵を持っています。鳥インフルエンザについては農林省の管轄ですが、縦割り行政に加えて、共同研究体制もなくて厚労省と同様に官僚の認識不足には全く驚かされます。


【インフルエンザの認識不足の医師】

多くの医者の中にはインフルエンザに罹っても大したことはないとか、SARSに比べて怖くないとか言う輩がいますが、インフルエンザの真の怖さを経験されないで方の言葉でしょうか。ある推計ではインフルエンザによる脳炎、脳症あるいはライ症候群で亡くなったり 後遺症を残す事例は小児だけでも毎年200例を下らないのです。これは日本脳炎の比でもなくSARSの比でもない。 巷では、インフルエンザワクチンは効かない、あるいはワクチンの副作用が怖いといった風評がまかり通っていますが、流言飛語に左右されるというよりも流言飛語を吹聴するマスコミの対応はきわめて残念なことだと思う。

数多くあるワクチンのなかでもインフルエンザワクチンは最も安全性の高いワクチンの部類に入ります。何十万、何百万という接種者の母数を考えれば、他のワクチンと比較して、其の安全性は容易に理解できるはずである。ただし卵アレルギーの強い人は接種を受けないように。インフルエンザワクチンは、単純計算で少なくとも2500〜3000億円の医療費の損失をペイ出来るとの試算もあります。

こんな状態でワクチンを勧めない医師の方が絶対におかしいということになります。極論ですが、当院の近隣で、ワクチンはしない。インフルエンザの検査はするがタミフルは出さないという小児科がありますが、この先生は頭のねじが足りないとしか言えない。表に「ここはインフルエンザのいっさいの治療をしない」と表示すべきです。

とはいえ小児科領域は難解です。ワクチン接種では中学生〜大人であれば0.5mlを注射するわけですが、6歳〜12歳は0.3ml、1歳〜6歳は0.2ml、1歳未満は0.1mlと注射する量が違うのです。変人の多い小児科医達ですから、異論があるのは当然ではありますが、実際私たち内科医から考えても0.1mlや0.2mlで効くとは思えません。で、2回打ちを推奨することとなりますが、今度は成人の1回打ちの内科の接種にまで異論を挟みます。そうでなくても足りないワクチンを2回も接種すれば結果として絶対量が足りなくなることになります。例え1回でも受けないよりは受けた方がいいというのが我々内科医いや大人の常識ですから。


A型、B型インフルエンザについて:

平成19年10月現在、検出されたインフルエンザはA型です。潜伏期は2〜3日、症状は 寒気、倦怠感 頭痛 全身の筋肉、関節痛で始まります。 熱は39度から40度になることもあります。 全身症状は普通感冒に比べ重く、食欲減退、吐き気、下痢などがでてくることもあります。高熱は4〜7日続くこともありますので、早く休むなど体力の温存に務めることが大切です。B型もほぼ同様の症状ですが、やや発熱が軽いとか消化器症状が強いと言われていますが、臨床症状のみから断定するのは危険です。ウイルス検査で予想を覆されることが多いので、むしろ地元の感染症情報(市や医師会が集計しています)のほうが信頼できます。

現行のインフルエンザ自体は、世間で騒がれているほど怖くはありません。特に小児から小中高生くらいは免疫力がいちばん強い年齢で、確かに高熱が出たり咳がひどかったりしますが、たいていは治療しなくても3日〜5日の発熱で治ってしまいます。これに抗ウイルス薬を加えればこれらの症状がより早く消失します。ただ、血液病、心臓病などの持病(基礎疾病)を持つお子さんですと肺炎や髄膜炎を起こしやすいので、さらに用心をしたほうがいいと思われます。また、生まれて間もない赤ちゃんとご高齢者の方は、脳炎、肺炎など起こしやすく危険なことがあるので入院の適応にも気をつけなければなりません。

インフルエンザワクチンについて:

インフルエンザ予防接種は、疫学という分野ではその有効性がはっきりしているわけではありませんが、ワクチン接種が高齢者のインフルエンザによる死亡危険率を下げたとの報告は確かなようです。昨シーズンは900万人分のワクチンが使われ、市町村の高齢者推奨もあり、今シ−ズンは2000万人分が用意されています。

一時期のような不足は無くなるはずだったのですが、一部のバカマスコミが流行をすぎた頃「無いかもしれない」などと報道するため毎年ホントになくなってしまいます。ただし流行を防ぐ効果のはっきりした証拠はないわけですから、むしろ予防接種をしているからと過度の安心で無理をすることのほうが問題なのです。高齢者、受験生、医療機関の従業員、さらには団体生活をしている施設など場合ワクチンはぜひ受けられた方がいいと思います。

毎年大人のワクチン確保にも四苦八苦しています。当院の場合、保育園入園以前の乳幼児や小学校低学年の場合、2回接種は必要ですし、ワクチン接種を小児科専門医にお願いしています。

新しい治療法と治療薬:

インフルエンザの治療法は大きく変わりました。アマンタジン、ザナミビル、オセルタミビルの登場によるもので、インフルエンザも抗ウイルス剤を用いた化学療法の時代になったのです。従来の「インフルエンザだと思ったら静かに家で寝ていなさい」という指導だったものから「インフルエンザだと思ったら、できるだけ早く病院を受診し、インフルエンザ抗原のテストをしてもらい、陽性なら抗ウイルス薬を貰いなさい」というように、治療の方向が変わりました。実際、内科・小児科を標榜する医師の中にも「昔の知識で生きています」的な時代遅れの医師もいるので要注意です。以下の質問くらいには応えられる医師にかかることがコツでしょうか。

*アマンタジン(シンメトレル)という新薬ですが近年耐性化したとも言われますがA型インフルエンザにのみ有効です。もしA型インフルエンザにかかったかなと思ったら、出来るだけ早く(発症12時間以内に、遅くとも48時間以内に)服用します。1日2回内服で4〜5日間服用します。ただしB型には効果がないこと、吐き気やめまいなどの副作用で子供にはやや使いにくいこと、運転や高所作業に注意すること、さらには耐性を獲得しやすいことなどの欠点があります。とにかくインフルエンザ薬としては、最も安価です。

*ザナミビル(リレンザ)ですが、平成13年2月に発売されましたが吸入薬であるため投薬指導が難しい。また、品薄で現在、十分な入手はできません。A型とB型の両方に効き副作用も少ないので、高齢者などのハイリスク患者ばかりでなく、健康な成人や小児や受験生にも使用できます。使い方はちょっと難しい「 吸入」で使用し、1回2吸入(10mg)、1日2回(20mg)で5日間口から気道に吸入する。 できるだけ発病後早く(12〜48時間以内)吸入を開始する必要がある。胃腸症状のひどい人には有効ですが価格が高いのが唯一の欠点です。現在日本で20万人分を確保。

*オセルタミビル(タミフル)が最後に出て来てかつては最も切れが良かった内服薬です。A型とB型の両方に効き副作用も少ないので、高齢者などのハイリスク患者ばかりでなく、健康な成人や小児や受験生にも使用できます。昨年と同様に問屋の出し惜しみで今年も入手困難です。昨年から厚生労働省によって1歳未満の乳幼児に対しての投与が禁止されました。また10歳台の子供の使用が原則中止されたため、実質的には受験生には使用できません。また9歳以下の子供では保護者の48時間の監視が必須です。

ところで耐性化したのでしょうか近年のタミフルのインフルエンザへの切れ味が悪くなったような気がします。後進国で鳥インフルエンザにも有効と報告されたため唯一のお薬と言うことで厚労省では備蓄しています。

小児のお薬は?---大人とは全く違います

小児の場合、特に要注意なのは解熱剤の使用方法です。オリックスだったかドンキホーテだったか忘れましたが薬剤師が常駐しない薬品販売店(調剤薬局のことではない)で解熱剤を販売することが医療規制緩和だそうですが・・・・・責任のとれない官僚のこと・・・・・何か事故が起こったら誰のせいにするのでしょうか?薬剤師の資格があればいいというものでもないわけで。インフルエンザのように安易に解熱させない方がいい感染症もある訳ですから怖いのです。オリックスのバカ社長はホントに何を考え理解しているのでしょうか?タダ単に医学を商売にしてリースのように国民を高利貸し付けにして利益を上げようと考えているだけのように思います。

小児科領域は診断が難しいから小児科医のなり手がない現状に無知識薬剤師の規制緩和の参入を行う場合、例えばインフルエンザに解熱剤のアスピリン(大人用バファリン)を使うと、「ライ症候群」という致命的な副作用を起こす可能性が高いのです。アスピリン以外のポンタール、ロキソニンなどの解熱剤も、およそ薬理構造が似ているので使わないほうが無難だという意見もあります。調剤薬局でもH17.4より、医師の処方箋なしで購入できる風邪薬のなかにPL顆粒やポンタールが含まれたことで、医師の管理を受けないライ症候群の発生が増えないことを神に祈るばかりです。

では、安全なお薬のお話ですが、インフルエンザに対してはアセトアミノフェン(商品名:カロナール細粒やアンヒバ坐薬)などは小児に安全だと言われていますがその使用はできるだけ最小限にすべきです。さらには、水分を十分に与え、熱ければ涼しくし、寒ければ暖かくしてやることも必要です。薬局用の小児バファリンは大人用のバファリンと違って前述のアセトアミノフェンに替わっています。院内処方する医療機関の小児バファリンの中には未だにアスピリンのものが混じっている可能性もあり、薬の名前が同じだからといって、ホント安心できません。大人のお薬を半分のませるなど危険きわまりないことです。

抗生物質は?---感染予防には使いません

医療機関でよく出される抗生物質は、インフルエンザ自体には全く効果はありませんが、二次的に細菌の感染を伴った、ひどい気管支炎や扁桃炎とか肺炎を起こした場合にはむしろ積極的に使う必要があります。よく使われる抗生剤には「セフェム系」「マクロライド系」「ニューキノロン系」 があります。

インフルエンザにかからないために:

どの病気でも言えるのですが、無理を重ねないのが一番の対処法です。言うは易し、行うは難しではありますが、特に疲れたときには早めに休み、栄養を十分にとっておく。もしインフルエンザにかかったと思ったら、できるだけ早く(48時間以内に)医療機関を受診し検査しインフルエンザの特効薬を処方してもらう。これを飲み、すぐに休む。たとえ食欲が落ちても、水分とビタミンとタンパク質に富んだ食品をとるようにする。発症72時間を経過すると、これら特効薬の効き目は殆どなくなります。

感染ルートは?

ウイルスの感染ルートには、大きく分けて飛沫感染接触感染があります。飛沫感染は、風邪患者の鼻や喉から飛び散った気道粘膜の粒子を吸い込んで感染する場合のことで、接触感染というのは、ウイルスがついたテーブルや器具などに手をふれて、その手で鼻や口をさわったりして感染する場合です。部屋の中に風邪をひいた人を一人入れ、周りにひいていない人をおいて、飛沫感染で風邪が移るかどうかということを調べた実験では、くしゃみをすると皆そっぽを向きますから、直接移ることは予想以上に少ないのです。それよりも周囲に飛び散ったウイルスを触った手から、うつるケースの方がはるかに多いという結果が出ています。できれば患者さんから2m以上離れた生活をすることが好ましいのですが、この接触感染ルートでも、ウイルスは抗体がある人や、からだが元気一杯という人は、もちろん感染しにくいのです。

インフルエンザの予防とうがい :

「うがい・手洗い・マスクの時代から、アマンタジンやザナビミビル、オセルタミビルの時代に変わりつつあります」と言うべきなのですが、そうはいっても、やはりうがい・手洗い・マスクなど日頃の生活上の注意がとても大切です。過度の疲労、不摂生など体力、免疫力を損なう生活をしないことが大事です。

手洗いですが医学部の学生に蛍光染料をつけて手洗いさせますと、かなり丁寧に洗っても両親指など洗えていません。まして外出から帰っての手洗いなどウイルスは殆ど残っています。時間をかけて丁寧にというのが必要です。特に冬場は冷水で洗うのは限界と考えて、ぬるま湯で手洗い・うがいをすべきでしょう。

うがいで気になっていることがあります。食塩を入れてうがいをすれば殺菌力があると信じている人が多いです。喉がヒリヒリするほどの食塩を入れて喉を塩漬けにすれば、咽頭・扁桃などの免疫防御機構を壊してしまいます。むしろ白湯、ぬるま湯で十分です。お茶には殺菌成分があるのですが、これも出がらしで十分と考えます。

当院では、冬場のうがい6回法を勧めています。これは、毎食前のうがいに、外出後、寝る前を加えて大体6回になります。うがいの仕方は真上を向いてのどや鼻の奥を十分うがいしましょう。予防としてはこれだけで結構十分です。

マスクの効用は?

マスクの効果ですが、くしゃみや、咳の飛沫は上記のように2メートルくらい飛んでいきます。飛び出したウイルスが空気中に浮いている間に、それを直接吸い込むことによって感染することになります。残念ながらマスクをしてもウイルスをとめ、感染を予防することはできませんが、効用としては外気の冷えからのどを守り、湿度を保ち、ウイルスの侵入を防ぐ効果はあります。あのSARSでさえもN95マスクでなく、普通のマスクでも十分有効であり、多いに利用しましょう。


以上をまとめると、

インフルエンザの予防は
   1)普段から休養をとる。
   2)十分な栄養と水分をとる。
   3)できるだけ人混みを避ける。
   4)室内の乾燥に気をつける。
   5)外出時マスクを着用する。
   6)手洗いとうがい(6回法)の励行など。


もしインフルエンザにかかったなと思ったら

直ちににアマンタジン(シンメトレル)やザナビミビル(リレンザ)、オセルタミビル(タミフル)などを投薬してくれる医療機関を受診し、ウイルス検査を受ける。その結果陽性ならこれらの抗ウイルス薬の投薬を受ける。当院では5年前よりシンメトレルを使用しておりますが、大体有効であると思っています。リレンザは入手困難、タミフルは当院で昨年は2000カプセルを使用しておりますが禁止年齢が増えたおかげで現時点で入手不足はありません。

新型インフルエンザの危険性について

冬季にはインフルエンザが流行して高い熱に悩まされる人はたくさんいます。もしも、SARSの発生があった場合や、鳥インフルエンザが流行した場合には、これら急な発熱疾患にはすべて注意する必要があります。予防としてはインフルエンザワクチン接種などをしておくとともに、体調の維持に心がけ、外出から帰ったらうがいと手洗いを励行するなどの、基本的な生活を実行することが重要です。

また、このような自分を守るための対策とともに、咳などの症状があれば、周囲の人に感染させないように、咳(せき)をするときにはハンカチやティッシュなどで口元を覆う、あるいはマスクをするなどの気配りをする(レスピラトリー・エチケット)ことで、周囲の人たちも感染から守るという姿勢が非常に重要です。特に、医療機関を受診する際には、体調を崩した人が集まっている待合室などで、他の方から新たなウイルスをうつされないように、また他の方にうつさないように、効果は別としても必ずマスクを着用してください。

インフルエンザワクチンは個人防御のために行うもので、外国への旅行や出張の予定者も、インフルエンザウイルスに感染した際に発症や重症化を防ぐためには、インフルエンザワクチンの接種は効果があります。特にSARS対策として発熱者のチェックを実施している国や、鳥インフルエンザがニワトリの間で流行している国へ出かける時には、発熱したときに病気を診断する際の「混乱を避ける」意味でもインフルエンザワクチンの接種を受けておくことに意義があると考えられます。渡航先国や、訪問先、訪問目的など、状況ごとに判断をする必要がありますので、常に最新の情報を入手するようにしてください。


参考:塩酸アマンタジン(シンメトレル)について:

もともとはパーキンソン病治療薬ですが開発途中で抗ウイルス作用が確認されたという異色なお薬です

実は結構安くて、切れがいいというのが正直な感想です。耐性化が問題といわれてはいますが。

1)シンメトレルはどんなときに使うの?
基本的な使用法は、症状の重いインフルエンザ感染や免疫不全が疑われる場合、その他、治療を行う医療従事者ということになっていますが、その他A型インフルエンザに罹患し48時間以内、できれば12時間以内に、医師が特に必要と認めた場合に使うことができます。

2)シンメトレルの実際の効果は?
A型インフルエンザでは、感染初期にウイルスが細胞核内へ入るのを止めて増殖を防ぐ作用があります。この3年間当院での使用経験では有効率は、70%くらいと考えておりますが、今後数年後には、耐性といって効きにくい状態も起こるだろうと予測されています。耐性を起こさないためにも普通のかぜや、インフルエンザの予防ということでは絶対に使えないことになっています。

3)シンメトレルの副作用は?
めまい、ふらつき、頭痛、眠気があるといわれているので運転、高所作業などはしないこと。高齢者では肝臓障害、腎臓障害、心不全、安定剤服用時などは使わない方がいいです。

4)シンメトレルを使ってはいけない人は?
妊婦、産婦、授乳婦、乳児は絶対に禁止です。小児は体格にもよるが使わない方がよいとされ、高校生以上であれば、一般的には使用できますが、受験生は上記の理由で試験当日は使わないほうがいいでしょう。


参考:最後に日本医師会のQ&Aを抜粋します。


Q1:インフルエンザと普通のかぜはどう違うのですか?

 普通のかぜとインフルエンザを混同してはいませんか。普通のかぜの症状は、のどの痛み、鼻汁、くしゃみや咳(せき)などが中心で、全身症状はあまり見られません。発熱もインフルエンザほど高くなく、重症化することはほとんどありません。

 一方、インフルエンザの場合は38度以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛など全身の症状が強く、あわせて普通のかぜと同様の、のどの痛み、鼻汁などの症状も見られます。さらに、気管支炎、肺炎、小児では中耳炎、熱性けいれんなどを併発し、重症化することがあるのもインフルエンザの特徴です。

 高齢者や、呼吸器や心臓などに慢性の病気を持つ人は重症化することが多いので、十分注意する必要があります。最悪の場合は死に至ることもあります。近年、小児がインフルエンザにかかると、まれに急性脳症を起こして死亡するといった問題も指摘されています。

 また、インフルエンザは基本的に流行性疾患で、我が国では例年11月〜4月に流行しますが、一旦流行が始まると、短期間に乳幼児から高齢者まで膨大な数の人を巻き込むという点や、インフルエンザが流行した年には、高齢者の冬季の死亡率が普段の年より高くなるという点からも、普通のかぜとは異なります(医療従事者向けのQ13を参照)。

Q2:インフルエンザにはどんな種類がありますか?

 インフルエンザには原因となっているウイルスの抗原性の違いから、A型、B型、C型に大きく分類されます。A型はさらに、ウイルスの表面にある赤血球凝集素(HA)とノイラミニダーゼ(NA)という、2つの糖蛋白の抗原性の違いにより亜型に分類されます。いわゆるA/ソ連型、A/香港型というのは、この亜型のことです。歴史的にA型が大きな流行を起していますが、B型もヒトに感染し流行を起こします。C型もヒトに感染しますが、大きな流行は起こさないとされています。現在、ヒトの世界で広く流行しているのは、A/ソ連型ウイルス(H1N1亜型)、A/香港型ウイルス(H3N2亜型)、B型ウイルスの3種類ですが、症状や治療、予防法には大きな違いはありません(治療薬は型により異なることがありますので、医療従事者向けQ4〜Q5を参照してください)。インフルエンザの発症を防げるかどうかは、それぞれの人のからだがそれぞれのウイルスの種類に対して、防御のための抗体を持っているかどうかが鍵(かぎ)を握っています。

 また、このように抗原性の違う2種類のA型インフルエンザとB型インフルエンザのウイルスが、同じシーズンの中で複数流行することが多いので、A型インフルエンザにかかったあとB型インフルエンザにかかったりすることがおこります。


Q3:インフルエンザにかからないためにはどうすればよいのですか?

 予防の基本は、流行前にワクチン接種を受けることで、これは欧米では一般的な方法です。わが国でも年々ワクチンを受ける方の割合が増えてきています。インフルエンザにかかった場合の重症化防止の方法として有効と報告されています。インフルエンザは、インフルエンザにかかった人の咳(せき)、くしゃみ、つばなどの飛沫と共に放出されたウイルスを、鼻腔や気管など気道に吸入することによって感染します(飛沫感染と呼ばれています)。インフルエンザが流行してきたら、特に高齢者や慢性疾患を持っている人や、疲れていたり、睡眠不足の人は、人混みや繁華街への外出を控えましょう。

 空気が乾燥すると、インフルエンザにかかりやすくなります。のどの粘膜の防御機能が低下するためですので、外出時にはマスクを利用したり、室内では加湿器などを使って適度な湿度(50〜60%)を保ちましょう。十分に休養をとり、体力や免疫力を高め、常日ごろからバランスよく栄養をとることも大切です。帰宅時のうがい、手洗いも、一般的な感染症の予防としておすすめします。また、インフルエンザにかかって、咳(せき)などの症状のある方は特に、周りの方へうつさないために、マスクの着用が勧められます。

 なお、症状が出る前から抗インフルエンザウイルス薬を飲むことによる、インフルエンザの症状を予防する効果については、まだ国内での調査研究が十分に行われておらず、現在のところ推奨されていません。


Q4:インフルエンザにかかったらどうすればよいのですか?

 どの病気でも共通して言えることですが、早めに治療し、体を休めることは、自分のからだを守るだけでなく、他の人にインフルエンザをうつさないという意味でも大変重要なことです。一般的には以下のような点に注意しましょう。

* 単なるかぜだと軽く考えずに、早めに医療機関を受診して治療を受けましょう。
* 安静にして、休養をとりましょう。特に睡眠を十分にとることが大切です。
* 水分を十分に補給しましょう。お茶、ジュース、スープなど飲みたいもので結構です。

 インフルエンザウイルス治療薬としての抗ウイルス薬は、医療機関で診察の上で使用できます。インフルエンザには抗生剤(抗菌薬)は効きません。しかし、インフルエンザにかかったことにより、他の細菌にも感染しやすくなり、このような細菌の感染による肺炎や気管支炎などの合併症に対する治療として、抗生剤(抗菌薬)が使用されます。それぞれの薬の効果は、ひとりひとりの症状や体調によっても異なり、正しい飲み方、飲んではいけない場合、副作用への注意などがありますので、医療機関できちんと説明を受けてください。また、使用する、しないは医師の判断となりますので、十分に医師に相談することが重要です。

 なお、いわゆる「かぜ薬」と言われるものは、発熱や鼻汁、鼻づまりなどの症状をやわらげることはできますが、インフルエンザウイルスや細菌に直接効くものではありません。


Q5:インフルエンザにかかったとき、解熱剤は使ってもよいのですか?

 解熱剤には多くの種類があります。その中で、インフルエンザに罹っているときには使用を避けなければならないものがあります。代表的なものが、アスピリンなどのサリチル酸解熱鎮痛薬ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸です。別の人に処方された薬はもちろん、当人用のものであっても別の受診時に処方されて使い残したものを使用することは避けるべきです。また、市販の解熱鎮痛薬の一部にはアスピリンなどのサリチル酸系の解熱鎮痛成分を含んだものもありますので、自己判断せず、使用時にはかかりつけの医師によく相談してください。詳細は医療従事者向けQ6をご参照ください。


Q6:インフルエンザにかかったら学校や職場に行かない方がよいのですか?

 一般的にインフルエンザウイルスに感染して、症状がでてから3〜7日間はウイルスを排出すると言われています。健康な成人では、インフルエンザは通常2〜3日で熱が下がりますので、熱が下がっても一両日はうつす可能性が残ることになります。したがって、症状がでてから3〜7日間は他の人へうつす可能性が高いので、人の多く集まるところは避けた方が良いでしょう。学校や職場に行く場合はマスクをするなど、周囲の人へうつさないように配慮してください。

 学校保健法では、「解熱した後2日を経過するまで」をインフルエンザによる出席停止期間としておりますが、「ただし、病状により学校医その他の医師において伝染のおそれがないと認めたときは、この限りではない」となっており、医師の裁量が認められております。また、職場復帰の目安については決まったものがありません。

 インフルエンザ罹患後には体力等の低下もありますので、以上のような点を考慮の上、いずれの場合も無理をせず、十分に体力が回復してから復帰するのがよいと考えられます。また、咳(せき)などの症状が続いている時に人の集まるところへ出て行く場合には、咳(せき)やくしゃみをする際には必ずハンカチやティッシュで口元を覆う、あるいはマスクをするなど、周囲への配慮(レスピラトリー・エチケット)が望まれます。


Q7:インフルエンザにかかった人の部屋や衣類はどのようにしたらよいでしょうか?

 インフルエンザにかかった人が部屋の中にいた場合、その人の咳やくしゃみ(飛沫)の中にインフルエンザウイルスがいる可能性がありますが、飛沫というのは1〜2メートル以上は飛びませんし、マスクをしていれば飛沫の発生は最小限に抑えることができます。また、机、取っ手、ノブ、などの手や指先を介した感染もありますので、手洗いは重要です。狭くて換気の悪い部屋などでは、比較的長くウイルスが浮遊することもありますので、時々空気の入れ換えをすることや、部屋の湿度を適度に保つことなどが大切です。インフルエンザウイルスはほとんどの消毒薬に弱いので、目に見えるような、痰(たん)やつば、くしゃみで飛んだ分泌物などによる汚れがある場合には、通常の消毒薬により消毒しておくほうがよいでしょう。しかし、部屋などは通常の掃除だけで十分だと考えられます。

 インフルエンザにかかっている時に着用した衣服には、ウイルスが付着していることが予想されますが、これから感染を起こすことはまれだと考えられています。通常の洗濯をして日なたに干す、あるいはアイロンをかけるなどしておけば、インフルエンザに限らず、多くのウイルスの感染性はなくなってしまいます。



Q8:インフルエンザワクチンの接種は効果がありますか?

 インフルエンザワクチンの接種を行うことで、インフルエンザによる重篤な合併症や死亡を予防し、健康被害を最小限にとどめることが期待できます。このワクチンの効果は、年齢、本人の体調、そのシーズンのインフルエンザの流行株とワクチンに含まれている株の合致状況によっても変わります。ワクチンの接種を受けないでインフルエンザにかかった65歳以上の健常な高齢者について、もし接種していたら約45%の発病を阻止し、約80%の死亡を阻止する効果があったと報告されています。特に65歳以上の方や基礎疾患がある方(気管支喘息等の呼吸器疾患、慢性心不全、先天性心疾患等の循環器疾患、糖尿病、腎不全、免疫不全症(免疫抑制剤による免疫低下も含む)など)では、インフルエンザが重症化しやすいので、かかりつけの医師とよく相談のうえ、接種を受けられることをお勧めします。

 わが国のインフルエンザワクチンは、WHOが推奨したウイルス株を基本にして、日本の流行状況や流行前の健康な人が持っている免疫の状況などから予測して作られています。現在のインフルエンザワクチンには、A型2種類およびB型1種類が含まれており、A/ソ連(H1N1)、A/香港(H3N2)、B型のいずれの型にも効果があります。また、ワクチン接種による免疫の防御に有効なレベルの持続期間はおよそ4〜5ヵ月となっていますので、毎年流行シーズンの前に接種することをお勧めします。

 なお、当然のことですが、インフルエンザワクチンの接種ではSARSはもちろん、他のウイルスによる「かぜ」(かぜ症候群)には効果はありません。


Q9:インフルエンザワクチンはいつごろ接種するのが効果的でしょうか?

 インフルエンザに対するワクチンは、個人差はありますが、その効果が現れるまでに通常約2週間程度かかり約4〜5ヶ月間その効果が持続するとされています。また、過去に同じ型のインフルエンザにかかっているか、ワクチン接種歴が有るか無いかにより、ワクチンの効果が現れるまでに差があると考えられています。多少地域差はありますが、日本でのインフルエンザの流行は12月下旬から3月上旬が中心になりますので、12月上旬までには接種をすまされることをお勧めします。

 インフルエンザの流行には地域性がありますので、全国的なインフルエンザの流行が始まっていても、地域によってはまだ流行していない場合もありますし、その逆に、全国に先駆けて流行する場合もあります。インフルエンザワクチンは接種してから免疫が出来るまでに約2週間かかることを考慮して、お住まいの地域で流行がピークになるまでに間に合うか間に合わないかを、地域の流行の状況をよく見て判断し、かかりつけの医師とご相談して接種をしてください。なお、インフルエンザは1シーズンに2種類以上の型が流行することがありますので、今流行している型には間に合わなくても、その後別の型が流行する場合はその型の予防を期待して接種をしておくのもよいと考えられます。


Q10:インフルエンザワクチンの接種はどこでできますか?

 インフルエンザワクチンの接種には、予防接種法に基づく定期接種と、任意接種があります。

 予防接種法に基づく定期接種では、接種医療機関が限られている場合もあり、各市区町村で接種の期間や費用の点でも異なることがありますので、それぞれの住民登録をしている地域の保健所、医療機関、かかりつけ医などに問い合わせていただくようお願いします。また、ワクチン接種の奨励事業などの地域での取り組みについては、詳細は各市区町村の保健所、医療機関、かかりつけ医などにお問い合わせください。

 定期予防接種の対象者(65歳以上の方及び60歳以上64歳以下の方で心臓やじん臓、呼吸器等に重い病気のある方)以外の方は、任意接種となりますが、接種期間に制限はなく、地域の医療機関、かかりつけ医などでインフルエンザワクチンを受けることが可能です。ただし医療機関によってワクチンの準備などのために、予約を必要とする場合もありますので、前もって接種を受ける医療機関に直接問い合わせて確認していただくようお願いします。なお、任意接種の費用は、法律により一定の価格の設定が禁じられているため医療機関により異なりますが、接種する国内生産のワクチンの効果および安全性には大きな違いはありません。


Q11:インフルエンザワクチンの接種の対象となるのはどのような人でしょうか?定期接種の場合と、任意接種の場合に分けて説明してください。

 予防接種法による定期接種では、重症化と死亡の報告が多い65歳以上の高齢者の方と、60〜64歳の基礎疾患(気管支喘息等の呼吸器疾患、慢性心不全、先天性心疾患等の循環器疾患、糖尿病、腎不全、免疫不全症など一定の基準があります)がある方に接種が勧奨されています。

 任意接種では、医学的に接種が不適当と考えられた場合を除けば、基本的にはインフルエンザの発症と重症化を防ぎたい方すべてが対象となります。

 特に、基礎疾患がある方(気管支喘息等の呼吸器疾患、慢性心不全、先天性心疾患等の循環器疾患、糖尿病、腎不全、免疫不全症(免疫抑制剤による免疫低下も含む)など)は、ワクチン接種を考慮すると良いと考えられます。

 小児については、平成16年11月に日本小児科学会より、「1歳以上6歳未満の乳児については、インフルエンザによる合併症のリスクを鑑み、有効率20〜30%であることを説明したうえで任意接種としてワクチン接種を推奨することが現段階で適切な方向であると考える」との見解が出されています。根拠としては、1歳未満児については対象数が少なく、有効性を示す確証は認められなかったこと、1歳以上6才未満児については、発熱を指標とした有効率は20〜30%となり、接種の意義が認められたことがあげられています。

 小児において気管支喘息等の呼吸器疾患、慢性心不全、先天性心疾患等の循環器疾患、糖尿病、腎不全、免疫不全症(免疫抑制剤による免疫低下も含む)などの基礎疾患を有している場合、6ヶ月から18歳の小児で長期間アスピリンを服用している場合(インフルエンザによってライ症候群に進行する危険があるため)、集団生活に入っている場合なども、インフルエンザに罹患した場合に重症化や合併症のリスクが高くなるため、接種を考慮しても良いと考えられます。

 またこれらの方と身近で接する機会の多い方も、「インフルエンザをうつさない」という考え方からワクチンの接種を考慮しても良いと考えます。

 なお欧米では、6ヵ月から24ヵ月未満の乳幼児もインフルエンザの重症化率が高いと報告されており、ワクチン接種による予防が望ましいと考えられ、米国などでは接種を勧めています。

 いずれの場合も、ワクチンの接種をする場合には、かかりつけの医師と相談のうえ受けてください。


Q12:インフルエンザワクチン接種を受けることが適当でない人や受けるときに注意が必要な人はありますか?

1) 予防接種法に基づいたインフルエンザワクチンの定期接種が、不適当と考えられる方は、予防接種実施規則に以下のように示されています。任意接種については自分の意思で決めることですが、医学的な立場からいえば、定期接種に準じて、十分な説明を受けて判断する必要があるといえます。

<予防接種実施規則第6条による接種不適当者(抜粋)>
(1) 明らかな発熱*を呈している者
(2) 重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者
(3) 当該疾病に係る予防接種の接種液の成分によってアナフィラキシーショックを呈したことが明らかな者
(4) その他、予防接種を行うことが不適当な状態にある者
  *:通常は、37.5度を超える場合をいいます。

 また、既往などから、接種の判断を行うに際して注意を必要とする方(接種要注意者)がおられますが、この方々は接種禁忌者ではありません。接種を受ける方の健康状態及び体質を良く考えたうえで、医師によって接種の可否が判断されます。接種を行う際には改めて十分に効果や副反応などについて説明をうけて、十分に理解した上で、接種を希望するかどうか決めてください。詳しくは、医療従事者向けQ23を参照してください。
 
2) インフルエンザワクチン接種の適応に関しては、年齢の下限はありませんが、通常生後6ヶ月未満の乳児にはワクチンを接種しません
 
3) インフルエンザワクチンは病原性をなくした不活化ワクチンと言う種類で、胎児に影響を与えるとは考えられていないため、妊婦は接種不適当者には含まれていません。しかし、妊婦又は妊娠している可能性の高い女性に対するインフルエンザワクチン接種に関しては、国内での調査成績がまだ十分に集積されていないので、現段階ではワクチンによって得られる利益が不明の危険性を上回るという認識が得られた場合にワクチンを接種するとされています。また、妊娠初期はいろいろな理由で自然流産する可能性の高い時期なので、一般的に予防接種は避けた方がよいと考えられています。一方、インフルエンザワクチンを接種しても胎児に異常の出る確率が高くなったというデータも無いことから、予防接種直後に妊娠が判明しても人工妊娠中絶をする必要はないと考えられています。主治医によく相談をして判断してください。

4) 熱性けいれんの既往がある方に対するワクチンの接種に関しては、日本小児神経学会の見解(平成15年5月)では、「現行の予防接種はすべて行って差し支えないが、保護者に対して接種の有用性、副反応などについての十分な説明をして同意を得ることに加え、具体的な発熱時の対策(けいれん予防を中心に)や、万一けいれんが出現した際時の対策を指導すること」となっています。このようなお子さんにワクチンを接種する際には、流行が始まる前に接種をすませておかれることをお勧めいたします。
 
5) てんかんの既往がある方に対しては、発熱で容易に痙攣重積発作を起こす場合もあるので、てんかんを治療している主治医あるいはその依頼に基づき、事例ごとに検討して、ワクチンを接種するか、しないかを決めるのが望ましいと考えられます。


Q13:卵やゼラチンにアレルギーのある人もインフルエンザの予防接種ができますか?

 卵アレルギーの程度にもよりますが、ほとんどの場合問題なく接種できます。インフルエンザワクチンは、その製造過程に発育鶏卵を使うために、ごくわずかながら鶏卵由来成分がワクチンの中に残って、それによるアレルギー症状がまれに起こることもありえます。しかし、近年は高度に精製されてワクチンにはほとんど残っていませんので、軽い卵アレルギーはほとんど問題にはなりません。

 しかしながら、重篤な卵アレルギーのある方、例えば鶏卵を食べてひどい蕁麻疹(じんましん)や発疹(ほっしん)を生じたり、口の中がしびれたりする方や、卵成分でアナフィラキシーショックを起こしたことがある方は、ワクチン接種を避けるか、インフルエンザにかかるリスクとワクチン接種に伴う副反応のリスクとを考慮して、接種前にかかりつけの医師とよく相談のうえ、十分に注意して接種をうけることを勧めます。

 また、ワクチンに安定剤として含まれていたゼラチンに対するアレルギー反応(アナフィラキシーショック)が報告されていましたが、現在、インフルエンザワクチンを生産している4社からの製品にはいずれも、ゼラチンはふくまれていません。


Q14:授乳中にインフルエンザワクチンを接種しても大丈夫ですか?

 授乳婦はインフルエンザワクチンを接種しても支障はありません。インフルエンザワクチンは不活化ワクチンというタイプで、ウイルスの病原性を無くしてありますので、体内で増えることもありませんし、母乳を通してお子さんに影響を与えることもありません。一方、母親がワクチンを接種したことによって、乳児に直接のインフルエンザ感染の予防効果を期待することはできません(医療従事者向けQ25参照)。また、ワクチン接種による精子への影響もありませんので、妊娠を希望しているカップルの男性の接種に問題はありません。

 授乳期間中にインフルエンザウイルスに感染した場合も、このウイルスは血液中に存在することは極めてまれで、存在した場合でも非常にわずかであると言われています。したがって、母乳中にインフルエンザウイルスが含まれ、母乳を介して乳児に感染を起こすことはほとんど無いと考えられます。

 しかしながら、母親と乳児は日常から極めて濃厚に接触しておりますので、飛沫で感染するインフルエンザ罹患中は、乳児に感染するのではないかという不安の声も聞かれます。濃厚接触によってインフルエンザ感染の危険性が増加するというのは事実ですし、また母乳が乳児にとって極めて重要であるというのも事実です。また一方では、インフルエンザ患者は発症前からウイルスを排出しておりますので、母親が体調の異常に気付いたときには、すでに感染しているかもしれません。もちろん発症後の方がウイルス量は多いので、感染の危険は増加するという指摘もあります。こういったことを認識して、個々の状況に応じて現実的に対応することが必要でしょう。少なくとも、手洗い、マスクなどにより可能な限りの予防策をとることは合理的な方法でしょう。なお、抗インフルエンザ薬を使用した場合は、薬剤が母乳中に移行すると言われており投与中に母乳を与えることは避けることとなっています


Q15:はしかや、水ぼうそうにかかっていたり、定期予防接種の時期と重なった場合にはどうすればよいですか?

 はしか(麻疹)や水ぼうそう(水痘)などに感染してしまった場合には、一般的には完全に治ってから4週間はインフルエンザワクチンの接種をひかえた方がよいとされています。これらの疾患に罹患すると、免疫能が低下していることがあるため、ワクチン接種の効果を得るには期間をあけ、免疫能の回復を待つ必要があると考えるためです。

 小児の定期予防接種と日程が重なった場合は、基本的には定期の予防接種を優先しますが、地域でのその疾患の流行状況やインフルエンザの流行の状況からインフルエンザワクチンの接種を優先する場合もありますので、かかりつけの医師と十分ご相談のうえ判断して下さい。

 定期予防接種のうち生ワクチン(ポリオ、麻疹、風疹、BCG)であれば4週間以上、不活化ワクチンやトキソイドワクチン(DPT、DT、日本脳炎)であれば1週間以上間隔をおけば、インフルエンザワクチンは接種可能となります。

 またインフルエンザワクチンは不活化ワクチンですので、接種後は1週以上間隔をおけば他のワクチン(生ワクチン、不活化ワクチンとも)接種が可能となります。


Q16:インフルエンザワクチン接種は何回受ければよいのでしょうか?

 65歳以上の高齢者に対しては1回の接種でも効果があり、2回接種による免疫の強化に関する効果についての評価は定まっていませんので、現在は1回接種が推奨されています。これは、厚生科学研究費による研究「インフルエンザワクチンの効果に関する研究(主任研究者:神谷 齊(ひとし)(国立療養所三重病院))」において、高齢者(65歳以上)に対するインフルエンザワクチン1回接種法による有効性の評価を行った結果、接種を行った後の抗体価の上昇は良好であり、重症化は十分に阻止する事が可能であったという報告に基づいています。また、これらの高齢者に接種した際の重篤な全身反応はなく、局所反応も軽微でした。

 なお、予防接種法により、「65歳以上の方」、「60歳から64歳までの方で、心臓、じん臓若しくは呼吸器の機能に障害があり、身の周りの生活を極度に制限される方、又はヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方」については、年1回、予防接種法による定期接種を受けることができ、万が一予防接種によると考えられる著しい健康被害にあった場合には、その1回の接種については、予防接種法による救済制度が適用されます。

 13歳以上64歳以下の方でも、近年確実にインフルエンザに罹患していたり、昨年インフルエンザの予防接種を受けている方は、1回接種でも追加免疫による十分な効果が得られると考えられます。2回接種をしたほうがより抗体価は上昇するという報告もあり、接種回数が1回か2回かの最終的判断は、被接種者の意志と接種する医師の判断によりますので、接種の際には最近インフルエンザにかかったことがあるかどうか、最近ワクチン接種を受けたことがあるかどうかとその時期、そして現在の体調などを担当医師に十分伝え、よく相談して下さい。

 なお欧米諸国では、新しい型のインフルエンザウイルスが出現しない限り、年少児を除いて、ほとんどの人がインフルエンザウイルスに対する基礎免疫を獲得しているので、1回の接種で追加免疫の効果があるとしているところがほとんどです。


Q17:インフルエンザワクチンの接種による副反応にはどのようなものがありますか?

 一般的に副反応は軽く、10〜20%でワクチンを接種した場所の発赤、腫れ、痛みなどをおこすことがありますが、2〜3日で消失します。全身性の反応としては、5〜10%で発熱、頭痛、さむけ、体のだるさなどがみられますが、やはり2〜3日で消失します。ワクチンに対するアレルギー反応として湿疹、じんましん、発赤とかゆみなどが数日見られることもまれにあります。

 インフルエンザワクチンは不活化ワクチンですので、ウイルス自体は化学的に処理され病原性はありませんから、その接種によってインフルエンザになることはありません。ワクチンの接種後に発熱した場合も、インフルエンザ以外の冬季に見られる呼吸器疾患にかかった可能性もあり、必ずしもワクチンの副作用とは限りません。

 卵アレルギーについてはQ13を参照してください。その他にギランバレー症候群(GBS)、急性脳症、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、けいれん、肝機能障害、喘息発作、紫斑などの報告がまれにありますが、ワクチン接種との直接的関連については明らかになっていません。参考までに、米国ではこれまでにギランバレー症候群を発症したことがある人においてはインフルエンザワクチンを接種しない様に指導されています。

 極めてまれですが、死亡の届け出もあります。日本では、昭和51年から平成6年までの、主に小児に対して接種が行われていた頃の統計では、インフルエンザワクチン接種により引き起こされたことが完全には否定できないとして、救済対象と認定された死亡事故は約2,500万接種あたり1件でした。


Q18:インフルエンザワクチンで著しい健康被害が発生した場合は、どのように対応されるのですか?

 予防接種法による定期接種の場合、予防接種をうけたことによる健康被害であると厚生労働大臣が認定すると、予防接種法に基づく健康被害の救済措置の対象となります。詳しくは医療従事者向けQ34をご参照ください。

 また、予防接種法の定期接種によらない任意接種によって健康被害が生じた場合は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法による被害救済の対象となります。健康被害の内容、程度等に応じて、薬事・食品衛生審議会(副作用被害判定部会)での審議を経た後、医療費、医療手当、障害年金、遺族年金、遺族一時金などが支給されます。詳細な内容は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(TEL:03-3506-9411)にご照会ください。


Q19:インフルエンザワクチン接種の費用には健康保険が適用されますか?

 予防接種については、病気ではないため健康保険が適用されません。原則的として全額自己負担となります。

 ただし、65歳以上の方及び60歳以上65歳未満の方で心臓やじん臓、呼吸器等に重い病気のある方などは、予防接種法による定期の予防接種の対象となります(60歳以上65歳未満の方で、対象となるかどうかわからない場合は、市区町村にお尋ね下さい)。市区町村により予防接種期間や、自己負担額が異なりますので、個別の情報については、それぞれのお住まいの市区町村へお問い合わせください。

 また、そのほかの方の接種は従来どおりの任意接種で、ご本人と医療機関との契約により行うこととなりますので、接種費用は全額自己負担となります。接種費用は私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律により一定の価格の設定が禁じられており、医療機関により算定方法が違うため、医療機関により異なりますので、接種を受ける予定の医療機関へ直接お問い合わせください。使用されるワクチンはすべて、厚生労働省の決定したワクチン株を使用し、検定を受けていますので、ワクチンの品質に差はありません。



Q20:今年流行するインフルエンザは何ですか?

 最近は毎年、A/ソ連型とA/香港型の2種類のA型インフルエンザとB型インフルエンザの3種類の型のウイルスが、一緒に流行してきました。2003/2004シーズンは、ほとんどが前シーズンと同じ福建株のA/H3N2(香港)型が12月初旬から流行し始め、1月末にピークがみられました。山形系統株が主体のB型も同時に流行しましたが、その数はA/H3N2(香港)型比べて非常に少なく(約5%)、3月中旬に流行は終息しました。

 インフルエンザは、ヒトの免疫のシステムを逃れて生きのびるために、抗原性の変を繰り返すので、正確にどの株が流行するかを予測することはとても難しいとされていますが、患者分離株の分析と、南半球での流行状況も考慮して、2004/2005シーズンはA型については昨シーズンと同じ種類の株が、B型は異なる系統株が流行する可能性が高いと判断され、今年(H17)のワクチンには、A/H1N1(ソ連)型のニューカレドニア株A/H3N2(香港)型として福建株に対応できるワイオミング株B型の上海株(山形系統株に対応できる)を混合したものが用意されました。

 全国の流行や検出の現状は、地域の感染症情報センター、保健所や国立感染症研究所のホームページで知ることができます。

○国立感染症研究所感染症情報センターホームページ:
 http://idsc.nih.go.jp/index-j.html

○地方衛生研究所・保健所ホームページへのリンク:
 http://idsc.nih.go.jp/phi/index.html
 http://idsc.nih.go.jp/hcl/index.html


Q21:新型インフルエンザが現れるとどうなるのでしょうか?

 インフルエンザの流行の歴史をみると、スペインインフルエンザ(A/H1N1亜型)が現れたときは、大規模な流行と甚大な数の死者を出しました。新型インフルエンザが流行した場合、これに対して免疫を持っている人はいませんし、また事前に接種された予防接種の効果は余り期待できないため、かなりの数の罹患者と死亡者がでることが予想されます。アメリカでは8〜20万人の死者が出ると予測されており、わが国では65万人の死者が出ることが懸念されます。

 最近、ヒトにも病原性の高い鳥型のインフルエンザウイルスがヒト社会に定着し、近い将来にヒトからヒトへ感染するようになり、新型インフルエンザとなることが懸念されています。1997年に香港で発生した、鳥型インフルエンザ(A/H5N1亜型)ウイルスによる患者報告では、入院加療を受けた18症例中6例が肺炎の合併などにより死亡し、香港政府は1997年12月末、140万羽のニワトリを殺処分しました。このウイルスは、ヒトからヒトに感染したものではなく、恐らく感染しているニワトリからヒトに感染したものと考えられています(IASR Vol.18 No.9)。2003年には、中国で感染が報告されており、こちらはヒトからヒトへの感染が疑われています(IASR Vol24 No3)。2003/2004年のタイ、ベトナムを中心とした東アジアでの家禽類を中心とした鳥インフルエンザ(A/H5N1)の流行では、少数ではありますがヒトでの感染が確認されています。2004年10月20日現在43症例が報告され、このうち31例が死亡しています。また、2事例においてヒトからヒトへの感染が完全に否定できず、調査研究が続けられています(http://idsc.nih.go.jp/disease/avian_influenza/index.html)。これ以外にも、2003年2月にはオランダで、鳥型インフルエンザウイルス(A/H7N7)のヒトへの感染が確認され、家庭内でのヒトからヒトへの感染が強く疑われています(IASR Vol24 No6)。

 この他にも2001/2002シーズンに、従来のヒトに感染するインフルエンザウイルスのA/H1N1とA/H3N2の遺伝子が交雑したA/H1N2が初めてヒトから分離されましたが、このウイルスには、これまでのインフルエンザHAワクチン(A/ H1N1)で効果があると考えられています(IASR Vol23 No8)。このA/H1N2は2003/2004シーズンには見られていません。

 これらのウイルスがこのまま姿を消してしまうのか、あるいは再び勢いを盛り返して流行するかはだれにも予測がつきませんし、どのようにしてトリのウイルスが直接ヒトへ感染を起こしたのかもその詳細はわかっていませんので、監視の体制を強化していくことが必要です。

 平成16年8月に、厚生労働省の「新型インフルエンザ対策に関する検討小委員会」がまとめた報告書が、厚生労働省のホームページに掲載されています。

新型インフルエンザ対策報告書:
 http://www.mhlw.go.jp/topics/2004/09/tp0903-1.html


Q22:インフルエンザワクチンは国によって違うのでしょうか?

 インフルエンザワクチンに使うウイルスの株は、ほとんどの国でWHOが2月中旬に出している「北半球次シーズンに対するワクチン推奨株」に基づいて、国の事情を総合的に検討して決め、3つの型(A/ソ連型、A/香港型、B型)を含むワクチンが作られています。つまり、WHOの意見を参考に決定しているため、製造の都合上の違いはあっても、ワクチン株が国によってまったく異なっていたということはこれまでほとんどありません。つまり、日本で接種したワクチンも、米国で流行しているインフルエンザに効果がありますし、逆に米国で接種したワクチンも、日本で流行中のインフルエンザに対して効果があることになります。ただし、ワクチンの製造方法や添加物などは国によって若干の違いがあるため、接種によって得られる免疫力や副反応の頻度に、差が見られることがあります。


Q23:今年のインフルエンザシーズンにSARS(重症急性呼吸器症候群)や鳥インフルエンザが起こったら、どうすればよいのですか?

 SARSについては、2003/2004シーズンにみられた発生報告は実験室内での感染例でした。また、鳥インフルエンザについては、国内での家禽類の間での発生はみられたものの、平成16年10月時点まで国内でのヒトの感染の報告はありません。今冬起こるのかどうかについては、世界中のだれにもわかりません。引き続き警戒をして行くことが必要です。

 SARSはSARSコロナウイルス、インフルエンザはインフルエンザウイルスによる感染症で、まったく違う病原体によるものですが、初期の症状はよく似ており、症状からだけでは区別はつきません。両者を見分けるには、医療機関において各種検査を行いその結果などから総合的に判断することが必要です。また、鳥インフルエンザの原因ウイルスは例年ヒトの間で流行しているインフルエンザウイルスとは異なりますが、同じA型のインフルエンザウイルスによる感染ですので、ヒトに感染した際の症状は共通の部分が多く、一層インフルエンザとの区別は難しくなります。やはり、医療機関で各種検査を実施し、詳細な解析を行って初めて確定診断ができます。

 インフルエンザ様の症状が長引いたり、症状が強いか激しい場合で、かつ、実際にSARS患者と濃厚な接触をしたか、介護したか、同居したか、あるいはその体液に接触したか、SARSコロナウイルスや、それを含んでいる可能性のある検体を取り扱って実験をしているか、具合の悪い鳥との密接な接触などの感染の可能性が疑われるといった情報がある場合には、医療機関や保健所などへ早めに相談することが必要になります。先ずは、電話で相談をするようにしてください。

SARS(重症急性呼吸器症候群):
 http://idsc.nih.go.jp/disease/sars/index.html

高病原性鳥インフルエンザ:
 http://idsc.nih.go.jp/disease/avian_influenza/index.html

 国立感染症研究所のホームページに、SARSや鳥インフルエンザの情報が掲載されています。
 http://idsc.nih.go.jp/index-j.html

 

 


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